国民的女優として愛された夏目雅子。透き通る美しさで多くの人を魅了した彼女だが、37歳という若さでこの世を去った。ドラマ「西遊記」の三蔵法師役で大ブレークを果たし、人気絶頂のさなかでの突然の死は、日本中に衝撃を与えた。
1985年、人気絶頂のさなか、夏目はレース界の貴公子と呼ばれた伊集院レーシングチームのオーナー、伊集院さんと電撃結婚を発表する。華やかな芸能界と、スピードとスリルに満ちたレーシングの世界。一見かけ離れた世界で生きる二人の結婚は、世間を大いに驚かせた。
しかし、この結婚には、大きな影がつきまとっていた。当時、夏目は人気女優、篠ひろ子と恋仲と噂されていたのだ。二人の親密な様子は、たびたび週刊誌にも報じられていた。結婚発表後、篠ひろ子は沈黙を守り、世間では夏目の略奪愛が囁かれた。
結婚後、夏目は女優業をセーブし、家庭に入ることを決意する。しかし、幸せな家庭生活は長くは続かなかった。夫である伊集院氏との間には、子供を切望しながらも授かることができず、その焦りから夫婦仲は次第に冷え込んでいったと言われている。
そんな中、夏目は体調を崩し、病院で検査を受けた結果、急性骨髄性白血病と診断される。当時、この病気の治療法は確立されておらず、まさに死の宣告ともいえるものだった。
闘病生活を送る夏目の傍らには、常に伊集院氏の姿があった。彼は献身的に夏目を支え、その姿は世間から「良き夫」として賞賛された。しかし、その裏では、夏目は伊集院氏から精神的なプレッシャーを受けていたという話も後を絶たない。
一部報道では、子供ができないことを理由に、伊集院氏から何度も中絶を強要されていたという証言も飛び出した。
真実は藪の中だが、もしこれが事実だとしたら、夏目は愛する夫から想像を絶する苦痛を味わされていたことになる。
1985年9月11日、夏目雅子は帰らぬ人となった。葬儀の席には、伊集院氏はもちろん、かつて恋仲と噂された篠ひろ子の姿もあった。篠は涙ながらに夏目との別れを惜しみ、二人の関係は、最後まで謎に包まれたままだった。
夏目雅子の死から30年以上が経った今も、彼女の輝きは色褪せない。しかし、その笑顔の裏には、計り知れない苦しみや悲しみが隠されていたのかもしれない。彼女が残した数々の作品と共に、その波乱万丈な人生も語り継がれていくことだろう。