日本が誇る天才ピアニスト、辻井伸行。その名は、世界中のクラシック音楽界で知られ、数々のコンサートで観客を魅了してきました。しかし、その輝かしい成功の陰には、彼が生まれながらに抱える障害と、それを乗り越えるための並々ならぬ努力があります。

生まれつきの障害と、それを乗り越えるための決意

辻井伸行は、1988年9月13日、東京で生まれました。彼の両親は、辻井が生まれたとき、彼が全く目を開けないことに気付きました。その後の検査で、彼が「先天性小眼球症」という病気を患っていることが判明しました。この病気は、眼球が正常に発達しないため、視覚に重篤な障害を引き起こすものです。辻井は、完全に視力を失って生まれてきたのです。

母親である辻井いつ子さんは、この事実を受け入れることができず、泣き続ける日々が続きました。彼女は息子の将来に対して強い不安を抱いていました。しかし、周囲からの温かい励ましや、「見えるものよりも見えないものが大切である」という友人からの手紙によって、少しずつ前向きになることができました。

音楽との出会い—ピアノへの情熱

辻井がまだ幼い頃、母親はクラシック音楽を好んで家で流していました。彼はその音楽に反応し、リズムに合わせて足を動かすなど、音楽への興味を示しました。

特に印象的だったのは、辻井がわずか一歳になる前から、音楽の違いを聞き分けることができたというエピソードです。彼は別のピアニストが演奏すると、不機嫌になることもあったといいます。

この音楽への鋭い感性に気づいた両親は、辻井が4歳の頃にピアノのレッスンを始めることを決意しました。すると、彼はすぐに才能を発揮し、5歳の頃には母親が口ずさんだ「ジングルベル」に合わせて、おもちゃのピアノで伴奏をするようになりました。

記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください