1970年、昭和45年7月。東京高等裁判所は、ある重大な事件の控訴審で新しい判決を下しました。美子に対して懲役3年6ヶ月の実刑判決が言い渡されました。一審では過剰防衛が認められていたものの、控訴審ではそれが覆り、昭和2年の最高裁判決と同じ見解に基づき、より厳しい判決が下されたのです。
その日、朋一は家庭裁判所への異動を命じられました。朋一は最高裁事務総局で働いていましたが、突如として左遷のような異動が告げられ、怒りと失望を抱えます。彼の夢見たエリート街道は、この異動によって大きく外れてしまいました。朋一はこれまでの努力が無駄にされたような思いに駆られ、耐えがたい屈辱を感じます。
家族との間に溝ができ、彼は次第に孤独を感じるようになります。そんな中、妻から離婚を切り出されるというさらなる衝撃が待ち受けていました。彼は何のために戦っているのか、自分の存在意義さえ見失っていきます。
一方、美佐江の自殺の理由が徐々に明らかになっていきます。彼女は若くして東京に上京し、希望に満ち溢れていたものの、東京という大都会に飲み込まれ、孤独と戦っていました。
朋一は美佐江の過去を知ることで、彼女が抱えていた孤独と苦しみに思いを馳せ、自分自身もまた孤立していく感覚を強く感じます。
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