歌舞伎界を牽引する中村屋の血筋、そのDNAは確かに受け継がれている。近年、歌舞伎俳優・中村勘九郎と中村七之助の息子たちが舞台で輝きを放ち、観客を魅了している。幼い頃から稽古に励み、その才能を開花させた彼らの姿は、まさに「華麗なる一族」の系譜を継ぐにふさわしい。
2023年5月、歌舞伎座で行われた「五月晴嵐(さつきせいらん) 五月大歌舞伎」では、勘九郎の長男・中村勘太郎と次男・中村長三郎が揃って舞台に立った。演目は『寺子屋』。武家の妻が我が子を犠牲にして将軍家の一子を守り抜く物語で、勘太郎は寺子屋の師匠・松王丸、長三郎はその妻・千代役を熱演した。
弱冠11歳の勘太郎が見せたのは、師匠としての威厳と、我が子同然に可愛がっていた寺子を失う悲しみを表現する、堂々たる演技だった。特にクライマックス、敵に追われる寺子の身代わりとして我が子を差し出す場面での鬼気迫る表情は、観客の心を強く打った。幼いながらも、その演技力と存在感は、歌舞伎界の未来を担う逸材として大きな期待を抱かせるものだった。
一方、9歳の長三郎は、愛らしさと凛々しさを兼ね備えた千代を見事に演じ切った。我が子を犠牲にするという難しい役どころであったが、その悲しみと覚悟を、まだ幼い体全体で表現していた。特に印象的だったのは、我が子に最後の別れを告げるシーンだ。子役を抱きしめ、涙ながらに語りかける姿は、観客席からすすり泣く声が聞こえるほど、見る者の心を揺さぶった。
二人の演技を見た観客からは、「演技力が凄い」「才能を受け継いでいる」「これからの成長が楽しみ」など、絶賛の声が相次いだ。幼い頃から厳しい稽古に励み、歌舞伎に対する情熱を燃やし続ける彼らの姿は、まさに「努力の天才」と言えるだろう。
歌舞伎界では、幼い頃から舞台に立ち、経験を積むことが重要とされている。勘太郎と長三郎も、父である勘九郎や七之助の指導の下、日々精進を重ねている。
幼い頃から大舞台を経験することで、彼らは観客を魅了する術を自然と身につけているのだろう。
もちろん、彼らがここまで注目を集めているのは、単に「歌舞伎界のサラブレッド」だからではない。持ち前の才能に加え、たゆまぬ努力を続ける真摯な姿勢があってこそ、観客の心を掴むことができるのだ。
今後の活躍が期待される中村勘太郎と中村長三郎。歌舞伎界の未来を担う若き才能は、その輝きをますます増していくことだろう。