蒸し暑い夏の中でも、雅子さまは涼しげな笑顔で賓客を見送られていました。7月17日、日本で開催された「第10回太平洋・島サミット」の首脳夫妻を宮殿に招き、宮中茶会を開かれた天皇陛下と雅子さま。その陰には、長年雅子さまを支えてきたベテラン女官、岡山いちさんとの別れがありました。
7月12日付で女官の岡山いちさんが退職されました。岡山さんは1994年1月に東宮女官に着任し、天皇陛下の即位後も引き続き女官として仕えてきました。2011年1月から4年間は東宮女官長代理も務め、天皇ご一家を支える体制に混乱が生じることを防いでいました。
元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんは、女官の重要性について次のように語ります。
「女官は国家公務員試験の合格者や他省庁からの出向者ではなく、信頼関係が重視される職種です。プライベートに深く関わることから、適任者を探し出して採用されるのです。」
岡山さんは30年間にわたり、両陛下に仕えてきました。その間、行事での所作に精通し、祭祀などでの装束の着付けにも詳しく、他の女官を指導・助言する役割も担っていました。ふっくらとした容貌と温和な語り口で、職員からも信頼されていました。
岡山さんは愛子さまにとっても安心感を与える存在でした。
2004年春、雅子さまと愛子さまが軽井沢の別荘に滞在された際、岡山さんはお荷物や生活用品を運び、周囲が対応に苦慮する中でも穏やかな態度を崩さなかったと言います。
2010年、愛子さまが学習院初等科2年生の時には「登校不安」のために欠席が続いたこともありましたが、岡山さんはその時も雅子さまを支え続けました。
雅子さまが愛子さまに同伴して通学される際には、岡山さんが後ろから荷物を持って随行していました。愛子さまが山梨県の山中湖での校外学習に参加された際にも、岡山さんは雅子さまとともに愛子さまを見守り続けました。
77歳という年齢もあり、岡山さんは「十分に務めを果たせなくなった」と感じ、退職を決意されたようです。両陛下による英国ご訪問や愛子さまの就職を見届けた安堵もあったと見受けられます。
退職に際して、両陛下と愛子さまは岡山さんに対する感謝を表し、慰労の場を設けられました。
30年間、苦楽を共にしてきた「肝っ玉ばあや」との別れは涙を誘います。しかし、雅子さまと岡山さんの絆は永遠にほころぶことはありません。これまでの献身に感謝し、岡山さんの今後の幸せを祈りつつ、天皇ご一家との絆が続いていくことを願っています。