昭和の時代、結婚は今とは違う形で進められることが多かった。特にお見合い結婚が一般的で、家族や仲人が大きな役割を果たしていた。その中で、一組の夫婦がどのようにして結ばれたのか、その真実が両親の手紙から浮かび上がる。
高校を卒業した母は地元の役場に就職した。23歳で結婚するまで役場に勤めていたが、結婚を機に退職する。当時、女性は結婚が決まると「寿退社」するのが普通だった。母も例外ではなかった。
今年、実家の片付けをしていた際、父と母の結婚前の往復書簡と恩師の手紙が見つかった。両親は見合い結婚としか知らなかったが、手紙からはその裏にある詳細なやり取りが明らかになった。恩師の手紙には、母のことを書いた父の家族への手紙が含まれていた。
恩師の手紙には「耕三郎さんには八重子さんのような女性がふさわしい」と書かれていた。父と母は同じ小野高校の出身で、6歳の年齢差があったため、面識はなかった。見合いは仲人なしで、二人だけで会ったが、その後急速に進展した。
母から父へは3通の手紙が送られ、父からは結婚式前に1通だけ返信があった。母は結婚への思いや希望をたくさん書き、父からの返信はなかなか来なかった。ようやく届いた返信は、ドライな感じで面白かった。
「…貴方に外でうんと働いていただく為に、私にだって内助の功に専念したいです。二人の話し合いで、何かの形で働くことも私は喜びます。ただし、家事や時間を束縛しないことが条件ですが…」
母の手紙には結婚後の生活についての具体的な希望が綴られていた。一方で、父の返信は簡潔で事務的だった。
「お元気ですか?式まで余すところ一週間そこそこ。このお手紙が婚約時代に於ける僕から貴女への最初にして最後の文になるのかと思うといささか寂しい。」
父の手紙には、結婚式を楽しみにする一方で、最後の手紙になる寂しさも感じられた。
母は生前、「お父ちゃんとはお見合いで結婚したけど、本当はその前に、好きな人がいて、結局その人とは一緒になれなかった。もしその人と結婚してたら、人生変わってたやろな…」と語っていた。母には、結婚前に別の恋愛があり、その人とは結ばれなかったことを後悔していた。
両親の手紙を通して、昭和の結婚の現実が浮かび上がる。当時の結婚は、家族や社会の期待に応えるものであり、個人の感情や希望が必ずしも優先されるものではなかった。それでも、手紙には愛情や思いやりが感じられ、二人の絆が築かれていく過程が見て取れる。
昭和の結婚は、現代と比べて異なる価値観や社会背景の中で行われていた。しかし、そこには変わらない愛情や思いやりがあり、手紙を通して二人の絆が深まっていったことがわかる。両親の手紙から見える結婚の現実は、当時の家族の形や価値観を反映しており、現代の私たちにも多くの教訓を与えてくれる。
引用元:https://www.instagram.com/p/CyJ-arxSi5W/?igsh=MWhqMTEyYjdrZnh0YQ==,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]