阪神淡路大震災が発生した1995年1月17日、湯口アキラ君は2歳でした。彼は神戸で父母と兄の4人家族で幸せに暮らしていました。しかし、その日の未明に発生した震災は、彼の家族にとって壊滅的な打撃を与えました。アキラ君の住んでいた兵庫県芦屋市辻町のアパートは全壊し、家族3人は命を奪われました。

絶望と希望の間

震災発生後、アキラ君は瓦礫の中に取り残されました。まだ2歳で、自分の名前も言えない幼い彼が無事かどうかすらわからない状況でした。祖父は避難所を訪ね歩き、必死にアキラ君を探しました。

そして数日後、ようやく彼は自衛隊によって救出され、近所の人々に保護されているのが見つかりました。

地震の際、アキラ君の父親は、我が子を守るために自らの身を盾にしました。その姿勢は、息子を守り抜く強い意志の現れでした。その結果、アキラ君は無事に救出され、祖父母のもとで新たな生活を始めました。

新たな生活の始まり

震災後、祖父母は震災で壊れた自宅と海産物店を再建し、還暦を過ぎた彼らにとって2度目の子育てが始まりました。アキラ君は少しずつ震災の恐怖を乗り越え、成長していきました。彼を暖かく見守り続けた祖父母の愛情は、アキラ君の心の支えとなりました。

祖父母に育てられる中で、アキラ君は時折押入れの奥から見つかった家族のホームビデオを見ました。

震災から10年が経った頃、彼は初めて母親の声を聞きました。「これがお母さんか…」と呟いたその瞬間、彼の心には複雑な感情が渦巻いていました。母の声を初めて聞いた時の感覚は、彼にとって一生忘れられないものでした。

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