物語が進むにつれて、道長と真広の関係がますます複雑になっていく中、第35回では中宮・彰子の恋心が一条天皇に向けられる場面が描かれます。この回の中心には、藤原道長が一条天皇に仕える家族のために挑んだ危険な旅と、それを見守る周囲の人物たちの感情の葛藤が描かれています。
道長の一行は、険しい道を進みながら、雨や風に打たれながらも進行を続けていました。特に真広は、道長が無事であることを誰よりも祈っており、その姿が視聴者の胸を打ちました。一方、彼らを密かに監視している藤原これ地は、道長の一行に敵意を抱きつつも、複雑な感情を抱えていました。
道長の娘である寄道も、道中で父を支えるため、困難な状況でも「父を背負ってでも進む」と言い切るシーンは印象的でした。彼女の強さと父への深い愛情が感じられる場面であり、彼女の成長を見守ってきた源の年方も、その姿勢に感動を覚えます。
道長が山道を進む中、都では一条天皇が「白い夕顔の物語」を語り始めます。この物語は、生霊となった六条御息所の恐ろしいエピソードを描いたもので、真広はその心の葛藤に共感を示しました。天皇は、中宮・彰子の安産を願うため、道長が危険を冒して旅に出たことについても話を振り、真広はその親心を理解する一方で、天皇は道長の行動が自身への圧力ではないかと疑念を抱いています。
道長が無事に金風線に到着し、そこで行った宗教儀式は物語のクライマックスの一つです。
真広は道長の帰還を喜びつつも、彰子の安否を気にかける道長に、特に変わりはないと答えます。
道長の心には、藤壺の女御との秘密の恋愛が蘇り、彼はその気持ちを真広に伝えたいと感じますが、口に出せない葛藤に苦しんでいます。この場面での道長の内面的な対話は、彼の人間性を深く掘り下げる要素として、視聴者の心に残ります。
その後、真広と道長が石山寺で過ごした夜が描かれ、2人の過去の出来事が再び浮かび上がります。道長は、あの夜の真広の美しさを思い出しつつも、彼女の気持ちを完全に理解することができないまま、物語が進行していきます。
一方、物語の最後で描かれるのは、彰子が若紫というキャラクターに自分を重ね、光源氏と自分の未来について思いを巡らせる場面です。彼女は、光源氏と結ばれたいと願う一方で、現実の一条天皇との関係に迷いを抱いていました。
真広は彰子に、その気持ちを天皇に伝えるよう促します。そして、天皇が偶然藤壺を訪れていた際、彰子は勇気を出して自分の感情を告白します。この瞬間が、天皇の心を揺さぶり、2人の関係が深まるきっかけとなりました。物語の結末に向けて、天皇と彰子がついに結ばれる予感が視聴者に提示されます。
道長の尽力と彰子の恋心が交錯する中で、この35回は彼らの感情が緊張感を持って描かれた重要な回でした。視聴者は、次回の展開に期待を膨らませつつ、天皇と彰子の未来を見守ることになるでしょう。