江戸時代の上級武士といえば、一般的には豊かな生活を送っていたと考えられがちです。彼らは特権階級であり、当時の日本の人口の約7%を占める武士階級の中でも選ばれし者たちでした。しかし、その華やかなイメージの裏には、実は厳しい現実が隠されていました。上級武士たちの生活は、現代の私たちが想像するようなものではなく、多くの困難や葛藤があったのです。
まず、上級武士とはどのような人々を指すのかを理解する必要があります。江戸時代における統治機構は、大きく分けて幕府と藩の二つが存在しました。幕府は全国規模の組織で、将軍を頂点とする体制が築かれていました。幕府の下には、旗本と御家人という階層があり、上級武士は主に1万石以上の領地を持つ旗本に位置付けられます。
一方、地方を治める藩でも上級武士は存在しました。藩士の中でも、40石以上の禄高を持つ者が「上士」と呼ばれ、藩の中で高い地位を占めていました。しかし、上級武士であっても全てが安泰というわけではなく、その生活には多くの苦労が伴っていたのです。
上級武士の中には、役職に就くことができず、日々の生活に困窮していた者も少なくありませんでした。特に、幕府に仕える武士たちの多くは江戸に住んでいましたが、その全員に職務が与えられるわけではありませんでした。役職のない武士たちは、主に「小普請組」に属し、表向きは江戸城や幕府の施設の修理を担う役目を与えられていましたが、実際にはほとんど仕事がなく、ただ日々を過ごすだけの生活を強いられていたのです。
このような生活は、決して豊かなものではなく、上級武士であっても金銭的な苦しみを味わっていました。
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