江戸時代、大奥は将軍以外の男子が立ち入ることを許されない、いわば「女の園」でした。この空間には千人以上もの女性が暮らし、それぞれが異なる役割を担いながら、将軍家の私生活を支えるために働いていました。しかし、大奥の内情や、そこで働く女性たちの生活は一般にはあまり知られていません。

大奥の構造と役割

大奥は、江戸城の中でも特に重要な場所であり、将軍とその正室である御台所が暮らす場所として知られています。このエリアは、将軍家の私生活を支えるために、厳密に区画されていました。大奥は主に「御殿向き」「長局向き」「広敷向き」の三つのエリアから構成されており、それぞれが異なる役割を担っていました。

御殿向き

御殿向きは、将軍とその家族が生活するエリアです。この区域には、将軍が日常生活を送る「新御殿」や、御台所が生活する「御対面所」、そして歴代将軍と御台所の位牌が安置されている「御霊屋」などがありました。また、このエリアには、屋中たちが働く詰所も設けられていました。たとえば、お年寄りたちが詰める「千鳥の間」や、手紙や文書を管理する「御有室」などがあります。

長局向き

長局向きは、大奥で働く屋中たちの居住空間でした。二階建ての長屋が東西に広がり、江戸初期には二つの長屋でしたが、後に四つの長屋が造られました。屋中たちは役職によって住む場所が決まっており、役職が高いほど広い部屋が与えられました。上級の屋中は一人一部屋が与えられましたが、下級の屋中は二人から五人が一部屋を共有することが一般的でした。

広敷向き

広敷向きは、大奥の事務や警備を担当する役人たちが詰めていたエリアです。広敷向きで働く役人はすべて男性であったため、このエリアと御殿向きとの間には厳重な区画が設けられていました。広敷向きには、御台所の食事が作られていた「御前所」もあり、ここでは稲物（警備役）が台所の人々を監視していました。

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