花魁(おいらん)と聞くと、華やかな衣装に身を包み、妖艶な美しさを持つ女性たちを思い浮かべるでしょう。しかし、彼女たちはただ美しいだけではなく、古典や茶道、生け花、香道などの教養や技芸にも秀でていなければなりませんでした。数千人の遊女の中で花魁にまで昇りつめることができるのはほんの一握り。花魁になると、他の遊女とは一線を画す生活が待っていました。彼女たちは客を選ぶことができ、座敷では常に上座に座るなど、特別な地位を持っていたのです。
今回は、明治から大正にかけて活躍した3名の花魁に焦点を当て、その華やかな人生と哀しい運命について語ります。
若紫(わかむらさき)は、その若さと美しさで知られ、当時の男性たちを虜にしていた花魁です。彼女の美貌と才覚は世間に知れ渡り、多くの大富豪たちが見受け話を持ちかけてきました。しかし、彼女はお金持ちの客ではなく、かねてから恋心を抱いていた一人の男性を選び結婚を決意します。そんな幸せな未来を夢見ていた彼女に悲劇が襲いかかりました。
明治36年、電気が灯される5日前の夜、若紫とは全く関係のない男が、自分の求めていた花魁との無理心中に失敗し、気が狂った状態で乱入。彼女の喉元を短刀で突き刺しました。若紫は男を払いのけて廊下へ逃げ出しましたが、傷は致命的で、そのまま帰らぬ人となりました。男もその場で自らの喉を突き、命を絶ちました。この事件は大きな衝撃を与え、人々は彼女の冥福を祈り、「若紫塚」
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