私たちは、今ある日々が当たり前のように続くと思ってしまいがちです。しかし、その平凡な日常が突然奪われることもあるのです。
私は、夫との結婚生活がずっと続くと思っていました。時には不満を言い、愚痴をこぼし、八つ当たりすることもありましたが、同時に夫への愛情も伝えていたつもりです。
5歳の息子の育児に追われる中、夫はまるで大きな子供のようでした。家ではグータラな夫に文句を言いつつも、その日々が当たり前だと思っていました。
その日、朝早くに起きていつものように夫のお弁当を作っていましたが、ふとしたことから夫婦喧嘩が勃発しました。理由はくだらないもので、今となってははっきりと思い出せません。
私は夫に「もうアンタなんか帰ってこなくていいからね」と言い放ち、夫は「うるせー」と返しました。普段なら、夫が仕事から帰れば仲直りできていたはずです。しかし、その日は違いました。
夫はその日、仕事に向かう途中で事故を起こし、冷たくなって帰ってきました。目撃者の証言によると、高速道路で何かを避けようとしてハンドルを切り、事故を起こしたとのことです。
病院から連絡を受けたとき、私は驚きと悲しみで涙が止まりませんでした。病院で冷たくなった夫と対面したときも、現実とは思えない光景に言葉を失いました。
事故を起こした夫の車の中からは、ぐちゃぐちゃに潰れたケーキと1輪のバラが見つかりました。喧嘩した私と仲直りしようとして買ったものでしょう。その瞬間、私は言葉を失いました。
夫を亡くした後、私は息子のために笑顔を作っていましたが、心の中にはどうしようもない空虚感がありました。日々、夫婦喧嘩をしたまま別れることになったあの日のことを思い出し、前に進めずにいました。
そんな私を見ていた息子が、ある日保育園からの帰り道で言いました。「ママ、僕がいるよ。僕がもう少し大きくなったらママと結婚して、僕がパパになるよ。僕は絶対ケンカしてもいなくならないよ。」
5歳の息子からそんな言葉を聞いた私は、涙が溢れました。息子と一緒に、夫の分まで強く生きていこうと心に決めました。
今回の話は、当たり前のように感じている日常がいかに貴重であるかを教えてくれます。愛する人との時間を大切にし、日々を感謝して過ごすことの大切さを改めて感じました。